記者の82%がAI活用、それでも売り込みメールの88%はゴミ箱行きという現実

88% of PR Pitches Rejected, Yet PR Still Drives 86% of Media Coverage

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記者の82%がAI活用、それでも売り込みメールの88%はゴミ箱行きという現実
画像: プレスリリースより

ポイント

  • Muck Rackの調査でPRが記事の86%に影響力を持つと判明
  • しかしジャーナリストの88%は無関係なピッチを即削除している
  • AI活用は82%に達し、未確認AIコンテンツへの懸念が26%で最大の課題だ

米国ニューヨーク拠点のPRテックプラットフォーム大手Muck Rack(ジャーナリストのプロフィール・連絡先データベースとPR向けメディアリスト作成・ピッチ管理ツールを提供するSaaS企業)は、ジャーナリズムの現状を毎年調査・発表する年次レポート「State of Journalism 2026」を2026年3月19日公開の自社ブログで発表した。同レポートは2026年1月30日から3月2日にかけて米国のジャーナリスト約1,100人を対象に実施した調査に基づいており、AI時代におけるPRとメディアの関係性を詳細に分析している。

調査の最も注目すべき結果の一つが、PRピッチング(PR担当者がジャーナリストに対して行う報道提案のこと)が全体の記事の86%に何らかの影響を与えているという数字だ。これはPR活動がメディア報道に対して依然として極めて大きな影響力を持つことを裏付けるデータとして、米国のPR実務者の間で広く参照されている。一方で、同じ調査の中に全く相反するデータも示されている。ジャーナリストの88%が、自分の担当分野と無関係なピッチを受け取った場合に即座に削除すると回答しており、さらにピッチの内容が自分の読者コミュニティのニーズと「常に」マッチしていると感じているジャーナリストはわずか3%に過ぎない。量頼みの戦略はほぼ機能していない厳しい現実があると、同レポートは明確に指摘している。

AIツールの活用については、調査対象ジャーナリストの82%が業務にAIを活用していると回答しており、前年調査の77%から5ポイント上昇したことが明らかになった。使用ツールの内訳を見ると、米国OpenAIが開発した生成AI対話サービスChatGPTが47%と最多を占め、米国Googleが開発した生成AIサービスGeminiが22%でこれに続く。AIによって記事の生産速度が高まる中、PRプロフェッショナルには一層精度の高い提案が求められる構図になっていると同レポートは報告している。

同レポートが業界への警鐘として特に強調するのが、「チェックされていないAIコンテンツ」に関するジャーナリストの懸念の高まりだ。これを業界が直面する最大の課題と回答したジャーナリストは全体の26%に上り、前年比で8ポイントの急増を記録したことが判明した。事実確認を経ていないAI生成コンテンツが流通するリスクへの警戒感が急速に高まっており、PR担当者がAIを活用して作成したプレスリリースや資料に対してもメディア側の信頼性審査が厳格化する可能性があると、同レポートは示唆している。

ソーシャルメディアの取材活用についても注目すべき変化が報告されている。ジャーナリストが取材情報源としてソーシャルメディアを活用する割合は21%となり、2024年調査の33%から12ポイントもの急落を記録した。プラットフォーム別の信頼性を見ると、ビジネス特化型SNSのLinkedInが最も信頼できるプラットフォームとして58%のジャーナリストに選ばれている一方、動画SNSのTikTokについては61%が「信頼しない」と回答しており、プラットフォームごとの信頼度格差が鮮明になっていると同レポートは指摘している。

効果的なピッチの条件についても、同レポートは具体的なデータを提示している。ジャーナリストが好む理想的なピッチの条件として、本文は200字以内に収めること、送信タイミングは午前中のメールが有効であること、フォローアップは1回のみに留めること、そして読者や地域社会への影響を明示することが挙げられている。Muck RackのCEO兼共同創業者であるGregory Galant氏は、ピッチの量よりも精度と文脈の適合性が今後のメディアリレーションズにおける成否を分けるとの見解を示している。

記者の目

日本の広報担当者にとって、この調査が突きつける最大の問題は「精度」である。PR TIMES株式会社が運営する日本最大のプレスリリース配信サービスPR TIMESでは、2024年に年間約35万件のリリースが配信されたというデータがある。配信量は着実に伸びているが、88%のジャーナリストが無関係なピッチを即削除するという米国データを重ね合わせると、日本でも大量のリリースがほぼ読まれずに終わっている現実は想像に難くない。量を増やせば当たるという発想は、もはや通用しない。

もう一点、AI活用の格差は直視すべき数字だ。米国ジャーナリストの82%がAIツールを業務に使う中、電通PRコンサルティングが2023年に実施した調査では、日本のPR担当者でAIツールの活用を検討・試行中と答えたのは約40%にとどまっている。さらに日本には記者クラブ制度という固有の接点構造があり、米国型の1対1メールピッチが主流でない点も対策を複雑にする。だからこそ日本の広報担当者が今すぐ取り組むべき一手は明確だ。配信件数を増やすのではなく、担当記者の直近10本の記事を読んで「この記者の読者に刺さるか」を確認してからピッチを送るという基本動作を徹底することである。

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PRメディアリレーションズAI活用ジャーナリズム

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