社内広報の73%が戦略パートナーを目指しながら実現できている組織は18%にとどまる

Internal Comms: The 73% Aspiration vs. 18% Reality in Strategic Roles

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社内広報の73%が戦略パートナーを目指しながら実現できている組織は18%にとどまる
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ポイント

  • 社内広報の73%が経営の戦略的パートナーを目指すと回答した
  • しかし、実際にその役割を達成している組織はわずか18%に留まる
  • チーム構造が乖離の根本原因であり、AI活用も5%と黎明期にある

米国シカゴを拠点とするPR・コーポレートコミュニケーション専門メディア「Ragan Communications(レイガン・コミュニケーションズ)」は、社内コミュニケーション部門が抱える3つの重大課題を報じた。

同記事が取り上げたのは、米国イリノイ州に本社を置く世界最大級の保険ブローカー・リスク管理・コンサルティング会社「Arthur J. Gallagher & Co.(ギャラガー、NYSE: AJG、約130カ国で事業展開)」が発行した「2026年従業員コミュニケーションレポート」だ。このレポートは2025年9月から11月にかけて40カ国以上の社内広報・HR(人事)専門家1,300人超を対象に実施された調査に基づくもので、2026年3月10日に公開された。Ragan Communicationsはその後、同レポートの内容を取り上げた記事を公開している。

「戦略パートナー」への志と現実の深刻な乖離

レポートによると、社内広報・HR専門家の73%が「経営の戦略的パートナー」になることを目指しているという。しかし、実際にその役割を達成していると回答した組織はわずか18%にとどまるとしている。

ギャラガーはこの乖離の根本原因について、単なる意識の問題ではなく、チームの構造そのものが「メッセージを届けること」に最適化されており、「戦略を形成すること」に向けて設計されていないためだと指摘しているという。

この課題を克服した組織には明確な差が出るとも報告された。コミュニケーション戦略を文書化して組織内で共有しているチームは、そうでないチームと比べてKPI(重要業績評価指標)未達成リスクが50%減少し、経営の戦略コンサルタントとして機能できる可能性が4倍高くなるとしている。さらにレポートは、戦略文書化に取り組んでいるチームの特徴として、測定指標をアウトプット(発信量・開封率)からアウトカム(行動変容・経営貢献度)へ移行させている点を挙げており、指標の設計そのものが戦略パートナーへの転換を左右する要因だと分析している。

変更管理と情報過多という2つの壁

レポートが浮き彫りにした2つ目の課題は「変更コミュニケーション(組織変革に伴う社内への説明・合意形成)」だという。調査対象となった組織の61%が、正式な変更コミュニケーション戦略を持っていないと回答した。

レポートによると、コミュニケーション量が多い環境では、リーダーへの信頼が損なわれるリスクが30%上昇し、従業員のバーンアウト(燃え尽き症候群)リスクが24%増加するとされている。ギャラガーは、変更コミュニケーション戦略の欠如が過剰な情報発信を生み出す温床になりやすいとも指摘しており、変革の全体像や優先順位が共有されないまま個別の情報だけが発信され続けることで受け手側に影響が及ぶと説明しているという。

3つ目の課題が「情報過多」だ。調査対象の83%が情報過多を深刻な問題として認識していると報じられた。さらに、ライン管理職(現場のチームリーダーや中間管理職)のコミュニケーション能力が組織全体の広報効果を左右する重大リスクだと認識している組織は87%に上るという。しかし、その管理職に対してコミュニケーション関連のリソースやトレーニングを提供している組織はわずか21%にとどまるとしている。レポートはこの認識と対策の乖離を「ライン管理職ギャップ」と呼び、情報過多を解消するための実効的な施策として管理職への体系的なコミュニケーション教育を挙げている。

AI活用はまだ黎明期、本格統合は5%のみ

レポートはAI(人工知能)活用の遅れについても数字で示した。社内コミュニケーション業務へのAI統合を「最適化済み」と回答した組織は、調査全体のわずか5%だったという。

ギャラガーは、AI統合の遅れは単体の問題ではなく、前述の「戦略文書化の不足」や「変更コミュニケーション戦略の欠如」と複合的に絡み合うことで、部門全体の影響力低下につながる可能性があると分析しているという。

記者の目

この調査の数字は日本の社内広報部門にとって他人事ではない。日本能率協会の「2024年度社内コミュニケーション実態調査」では担当者の約60%が「経営戦略への関与が不十分」と感じており、73%対18%という乖離と構造が酷似している。電通PRコンサルティングが2024年に発表したデータでも、日本企業の社内広報チームの約70%が開封率などアウトプット指標のみを測定しており、経営貢献度を示すアウトカム指標の整備が遅れていることが明らかになっている。

日本固有の問題として、稟議文化と階層型のコミュニケーション構造がある。担当者が直接経営層へ提言する機会が制度的に少ない中でも、まず着手できる現実的な一手は「戦略の文書化」だ。追加予算なしで今月から実行でき、ギャラガーのデータはKPI未達成リスクを50%下げる効果を示している。戦略を紙に落とし経営層と合意することが、「情報発信係」から脱するための最初の一歩になる。

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社内広報経営戦略AI活用組織変革

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