広報担当者の98%がAI活用も組織に定着は2割未満、日米共通の「制度化の壁」とは
98% of PR Pros Use AI, Yet Organizational Integration Lags: Report Findings
ポイント
- 米国調査で広報担当者の98%がAIを活用し、約75%が日常的に使用
- しかしAIを組織のワークフローに統合しているのは20%未満に留まる
- 主な用途はアイデア出しやコンテンツ制作で、ディープフェイク対策は未整備
米国シカゴを拠点とするPR・コミュニケーション専門家向けのメディア・トレーニング企業Ragan Communications(ラガン・コミュニケーションズ)が運営するAI特化型会員制コミュニティ「Ragan Center for AI Strategy(ラガン・センター・フォーAIストラテジー)」は、コミュニケーション担当者のAI活用実態をまとめた初のベンチマーク調査レポート「The State of AI & Communications Report」を2026年3月10日公開の記事で報じた。調査対象はPR・広報領域のシニアリーダー層で、回答者の98%が何らかの形でAIを活用しており、そのうち約75%が日常的・定期的にAIを業務に使用しているという。
「使っている」と「組織に根付いた」は別物だった
しかし同レポートが同時に明らかにしたのは、広範な活用とは裏腹に「制度化」が著しく遅れているという現実だ。AIを組織の正式なワークフローや戦略に統合できている担当者は全体の20%未満にとどまるという。つまり残り80%以上は、個人レベルでAIを「試している」段階にすぎず、チームや組織全体の業務プロセスには組み込まれていないことになる。
同センターはこの状況を「導入と制度化のギャップ」と表現し、2026年3月時点でAIはコミュニケーション業務の日常的なリズムには組み込まれつつあるが、組織の制度的な仕組みにはまだ組み込まれていないと分析している。
AIの主要用途はアイデア出しとコンテンツ制作に集中
具体的な活用用途を見ると、最も多いのはアイデア出し・ブレインストーミングで85%以上が活用しているという。次いでコンテンツ制作が75.7%、リサーチが61.7%、社内コミュニケーションが55.3%と続く。
一方で、危機管理(炎上対応)や受け手・視聴者に関するインテリジェンス分析といった、より高度で戦略的な用途ではAI活用が低調にとどまっているとレポートは指摘している。AIが「書く・調べる」という作業補助ツールとして使われる一方で、意思決定や戦略立案への組み込みは進んでいないという構図だ。
ディープフェイク対策の準備不足が深刻な脆弱性に
同レポートが特に警鐘を鳴らすのが、ディープフェイク(AIによる映像・音声の偽造)への対応準備の深刻な遅れだ。「十分に準備できている」と答えた担当者はわずか4%未満。さらに51.5%が、ディープフェイクへの対応プロセスやツールが未整備または不明確な状態にあると回答したという。
生成AIの急速な普及により、企業の経営幹部や著名人の発言を偽造したコンテンツが拡散するリスクは現実のものとなっている。にもかかわらず、広報部門の組織的な対応体制の整備は世界的に立ち遅れているとレポートは示している。
また同レポートでは、ChatGPTやGeminiなどの生成AI型検索エンジンで自社情報が回答として取り上げられやすくするための最適化手法「GEO(Generative Engine Optimization=ジェネレーティブ・エンジン・オプティマイゼーション)」や、AIが自律的にタスクを実行するエージェント型ツールの台頭にも言及している。これらの新技術により、広報担当者には技術的なスキルと戦略的な判断力の両立が求められる新たな局面に入っているという。
今回のレポートは、Ragan Center for AI Strategyとして初の大規模ベンチマーク調査であり、30ページにわたるフルレポートは同センターの有料会員向けに公開されている。エグゼクティブサマリーは一般にも公開されており、Ragan Communicationsの公式サイトから入手可能だという。
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情報ソース一覧
- AIとコミュニケーションの現状レポート:導入から権威まで - Ragan Communications The State of AI & Communications Report: From adoption to authority - Ragan Communications www.ragan.com
- Raganの「AIとコミュニケーションの現状」調査が、広報チームのAI利用状況と準備不足をベンチマーク - Ragan Communications Ragan’s “State of AI & Communications” Study Benchmarks How Comms Teams Use AI and Where Readiness Breaks Down - Ragan Communications www.ragan.com
- AIとコミュニケーションレポート:導入、統合、そして次に来るもの - Ragan Communications AI and Communications Report: Adoption, Integration and What’s Next - Ragan Communications www.ragan.com
- AIとコミュニケーションの現状レポート:導入から権威まで - PR Daily The State of AI & Communications Report: From adoption to authority - PR Daily www.prdaily.com
- AI導入の物語は、禁止よりもガバナンスにかかっている - Ragan Communications The AI adoption narrative hinges on governance over prohibition - Ragan Communications www.ragan.com/ai-horizons-2026-adoption-governance/
- Raganの2026年AIとコミュニケーションレポート Ragan's 2026 AI and Communications Report www.ragan.com/white-papers/ragans-2026-ai-and-communications-report/
- コミュニケーションリーダーが2026年の最も危険なAIギャップを埋める方法 - PR Daily How communications leaders can close 2026’s most dangerous AI gap - PR Daily www.prdaily.com
- AI測定だけでは不十分。広報は意味を提供する必要がある - Ragan Communications AI measurement isn’t enough. Comms needs to provide the meaning. - Ragan Communications www.ragan.com/ai-horizons-26-panel-kpi-measurement/
- 飽和した市場でブランドのAI機能を信頼性をもって伝える方法 How to Credibly Communicate Your Brand's AI Capabilities in a Saturated Market www.ragan.com
- RaganとGallagherの2026年インターナルコミュニケーション Ragan and Gallagher's 2026 Internal Communications www.ragan.com/internal-comms-gallagher-2026/