「補助」から「再設計」へ、AIで業務プロセスを根本から問い直す通信業界の現在地
AI Transformation in Telecom: Accenture's Dan Rice on Practical Use Cases
ポイント
- アクセンチュアのダン・ライス氏が通信業界のAI活用を語った
- AIはカスタマーケアやネットワーク運用で実務的なインパクトを与える
- ベライゾンは7,000万件超のネットワーク設定をAIで自律実行した
通信・テレコム業界専門メディアのTelecom Ramblingsは、グローバルなコンサルティング・テクノロジーサービス企業であるアクセンチュアの米国通信・メディア産業リードを務めるダン・ライス氏へのインタビューを2026年8月17日公開の記事で報じた。同記事では、通信業界におけるAI活用の現状と、エージェンティックAI(自律的に行動するAI)が業務プロセスをどう変えつつあるかについて、ライス氏が詳しく語っている。
ライス氏は1991年にアクセンチュアへ入社し、米国地域通信事業者であるベル・アトランティック向けのCOBOLプログラマーとしてキャリアをスタートした。その後35年以上にわたって通信業界の変革を現場で見続けてきた人物であり、現在は米国の通信・メディア産業全体のデジタル変革支援を統括する立場にある。なお、今回のインタビューはライス氏との対話として1年半ぶりのものだとTelecom Ramblingsは記している。
AIの「実務インパクト」はどこに出ているか
ライス氏はまず、AI活用の議論が「自律型ネットワーク」「無人型ネットワーク運用センター(Dark NOC)」「AIネイティブな基幹業務システム(BSS)変換」に集中しがちだと指摘しつつも、直近数四半期で最もインパクトが大きいのはもっと実務的な領域だと述べた。具体的には、カスタマーケアチーム・ネットワークエンジニア・フィールド技術者が「より速く問題を解決し、情報探索に費やす時間を減らす」ことへのAI活用だという。
カスタマーケアの分野では、AIが単純な問い合わせ対応を超え、請求内容の説明、トラブルシューティング、アポイント管理までをこなし、初回解決率を高め、エスカレーション時の対応時間を短縮していると説明する。具体例として挙げられたのが、米国通信大手T-Mobileの「ライブ翻訳」サービスだ。このサービスは、ネットワークに直接組み込まれたリアルタイムAIを使い、専用アプリや機器の追加なしに、T-Mobileネットワーク上のあらゆる端末で80以上の言語による通話翻訳を実現しているとライス氏は紹介した。
ネットワーク運用でも同様の変化が起きているという。かつては何時間もかかっていたダッシュボードの確認作業がAIによって短時間で処理できるようになり、エンジニアは情報収集ではなく問題解決に集中できるようになったとしている。
AIエージェントは「提案する」段階に入った
次に話題はAIエージェントの活用に移った。ライス氏は「AIは質問に答えるだけでなく、行動を起こす段階に移行している」と表現する。新規顧客のオンボーディング(受け入れ手続き)、初日のトラブル対応、解約予兆の検出などをエージェントが担い始めているという。
具体例として紹介されたのが、米国通信大手AT&Tの「AIデジタル受付」だ。AT&TはこれをネットワークベースのエージェンティックAIアシスタントと説明しており、顧客に代わって着信に応じ、発信者を確認し、通話を通すかどうかを判断し、メッセージを受け取るか、配送受け取りの時間帯確認などの特定のやり取りを処理できるという。また、高度な音声対話とエージェンティックAIを使って迷惑電話のスクリーニングも行うとされている。
ライス氏は現状を「エージェントが提案し、人間がリードする」段階と位置づける。完全自律型の顧客対応はまだ発展途上だが、人間とAIが協働する「アシスト型モデル」はすでに実際の価値を生み出しているという。
オペレーション全体を「AIありき」で再設計する
ライス氏はさらに、多くの通信事業者がAIを「既存プロセスのどこに組み込めるか」という観点で捉えているが、より大きなチャンスは「AIエージェントが何をできるかを前提にプロセスを根本から再設計すること」にあると語った。
注文から開通までのプロセス(Order-to-activate)を例に挙げ、現在は営業・プロビジョニング・エンジニアリング・カスタマーケア・フィールド運用・課金など複数部門にまたがる多くの引き継ぎが発生していると説明する。エージェントがこれらのシステム間の調整と引き継ぎを担えれば、プロセスの姿は大きく変わり得るとした。
ネットワーク運用についても同様で、アラーム・パフォーマンス・過去チケットを手動で確認するのではなく、エージェントがネットワークの健全性を要約し、根本原因を特定し、修復手順を準備するという形に変わるという。米国通信大手ベライゾンの取り組みとして、「レベル4の認知的自動化」による自己修復型インテリジェントコアネットワークの構築を目標に掲げており、クローズドループ型自動化プラットフォームが2025年に7,000万件超のネットワーク設定変更を自律的に実行したとライス氏は紹介した。
こうした変化は技術だけでなく働き方そのものを変えるとライス氏は指摘する。管理職やシニアエンジニアは情報の整理・転送ではなく、エージェント主導の業務監督・例外処理・システム改善に時間を使うようになるとしている。エージェンティックAIはテクノロジーの問題であると同時に、オペレーティングモデルの問題でもあるというのがライス氏の見解だ。
アクセンチュア自身の取り組みとして、ライス氏はAI時代の顧客課題として「複雑なレガシー技術の近代化」「AIパイロットを企業全体規模に拡大すること」「AIが業務の進め方をどう変えるかの理解」の3点を挙げ、それぞれに対応するサービス群を開発していると述べた。テクノロジー開発向けのAIプラットフォームとして「GenWizard」を提供しており、レガシー技術を抱えながら変革を進める通信事業者を支援しているという。
情報ソース一覧
- 業界の注目: Accentureのダン・ライスがAIなどについて語る | Telecom Ramblings Industry Spotlight: Accenture's Dan Rice Talks AI and More | Telecom Ramblings www.google.com/goto
- 業界の注目 – Accentureのダン・ライスがAIやその他のトレンドについて語る | Telecom Ramblings Industry Spotlight – Accenture’s Dan Rice Dishes on AI and Other Trends | Telecom Ramblings www.telecomramblings.com
- 通信・メディアコンサルティング | Accenture Communications & Media Consulting | Accenture www.accenture.com/us-en/industries/communications-media
- 業界の注目: Accentureのダン・ライスがAIなどについて語る | Telecom Ramblings Industry Spotlight: Accenture's Dan Rice Talks AI and More | Telecom Ramblings www.telecomramblings.com
- Accentureが高度なAI技術を買収し、通信企業が自律型ネットワークへの移行を加速するのを支援 Accenture Acquires Advanced AI Technology to Help Communications Companies Accelerate Autonomous Network Journeys newsroom.accenture.com
- 電気通信コンサルティングサービス&ソリューション | Accenture Telecommunications Consulting Services & Solutions | Accenture www.accenture.com/us-en/industries/communications-media/communications
- 通信・メディアコンサルティング | Accenture Communications & Media Consulting | Accenture www.accenture.com/ch-en/industries/communications-media
- 通信・メディアコンサルティング | Accenture Communications & Media Consulting | Accenture www.accenture.com/mu-en/industries/communications-media
- 通信・メディアコンサルティング | Accenture Communications & Media Consulting | Accenture www.accenture.com/in-en/industries/communications-media