設定ルールを「忘れる」AI、広報の出力品質を左右するのは運用設計だった
Custom AI Forgets Instructions: PR Field's AI Quality Control Pitfalls
ポイント
- カスタムGPTが設定済みルールを「忘れる」問題が広報現場で発生
- サラ・エバンス氏は指示の「繰り返しと冗長性」が品質を担保すると強調
- この手法で2時間の作業が10〜12分に短縮され、チーム全体で効率化
米国の広報・コミュニケーション専門メディア「PR Daily」は、カスタムGPTが設定済みのルールを「忘れる」問題と、その実践的な解決策について、2026年5月12日公開の記事で報じた。
指示しても守られない、AIの「物忘れ」問題
カスタムGPTとは、OpenAIが提供するChatGPTをベースに、特定の業務ルールやトーンを事前設定して使う、業務専用のAIアシスタント機能だ。PR Daily によると、多くの広報担当者がこのカスタムGPTを業務効率化や成果物の品質向上に活用しており、より良い出力を得るために大量のプロンプト(AIへの指示文)を蓄積しているという。
しかし問題が生じているとPR Dailyは伝えている。PR会社Zen MediaのパートナーでPR部門責任者のサラ・エバンス(Sarah Evans)氏によると、カスタムGPTは詳細なルールを設定していても、その指示を「忘れたり」、事実と異なる内容(ハルシネーション)を生成したりすることがあるという。エバンス氏は具体例として、文章中の記号「ダッシュ(—)」の使用禁止ルールを挙げた。「100万回でも指示に書き込んでいるのに、下書きにはほぼ必ずダッシュが入ってくる」とエバンス氏は述べたという。
エバンス氏はこの問題の本質について、「指示の書き方やAI技術の問題ではなく、最良かつ正確な結果を出すためのシステムが整っていないことが原因だ」と指摘したとPR Dailyは報じた。「『カスタムGPTを作ってプレスリリースを最適化して』と魔法のように言うだけではダメで、あなた自身の知識から作り上げる必要がある」とエバンス氏は語ったという。
「繰り返しと冗長性」が品質を担保する
エバンス氏が推奨するのは、カスタムGPTを構築する前に、チームがすでに内部で使っている基準を言語化・文書化することだとPR Dailyは伝えた。具体的には、編集ガイドライン、フォーマットルール、信頼できる情報源のリスト、使用禁止フレーズなどが含まれるという。目標は、組織に蓄積された暗黙知を、繰り返し使えるインフラに変換することだとエバンス氏は述べたとしている。
さらにエバンス氏は、カスタムGPTを一度構築して終わりにするチームが多いという問題も指摘した。「一度作れば理解してくれると思い込み、そこで止まってしまう」というのだ。この思い込みに対してエバンス氏が実践しているのが、毎回のタスクごとに指示を繰り返し添付するという手法だ。
エバンス氏のチームでは、詳細な編集指示をまとめたPDF文書を、プロンプトごとに毎回添付しているという。この文書には、「AIらしい表現」の削減ルール、使用禁止フレーズ、ハルシネーション対策のガイドライン、見出しの書き方の基準、情報源の信頼度マップ、リード文(冒頭文)の構成方法、コンプライアンス指示など、複数ページにわたる指示が含まれているとPR Dailyは報じた。「すべてのコンテンツに添付している。毎回の繰り返しが重要だ。冗長性こそがすべて」とエバンス氏は語ったという。
2時間の作業が10分台に、チーム全体に展開
エバンス氏はまた、AIに対して作業を細かいステップに分けて指示することも有効だと述べたとPR Dailyは伝えている。「最初にこれをして、次にこれをして、と指示すると精度が上がる。まるで幼い子どもに話すように接する必要がある」と同氏は語ったという。
この手法の効果は具体的な数字でも示されている。エバンス氏のチームに在籍するジュニアライターは、記事の下書きを書く前に参考資料を調査する作業に約2時間を費やしていたという。エバンス氏はそのワークフローを詳細に分析し、各ステップを問い直したうえで、再利用可能なAIの「スキル」として文書化し、プロンプトへの付録として組み込んだ。繰り返しのテストでエラーと弱点を洗い出した結果、同じ作業が現在は約10〜12分で完了するようになったとPR Dailyは報じた。
このワークフローは現在、編集・ソーシャルメディア・PR担当の各チームに横展開されているという。エバンス氏は「1〜2回の初期投資で、チーム全体で文字通り何百時間もの節約を実現している」と述べたとされる。
加えてエバンス氏は、プレスリリースなど広報文書の構成についても新たな視点を提示した。LLM(大規模言語モデル)が文書の冒頭約240文字しか参照しない可能性があり、AI検索での表示を狙うなら、複数のサブ見出しや読者の質問を想定したFAQ形式のセクションを追加するなど、これまでとは異なる文書構成が必要になると同氏は指摘したという。エバンス氏はこれらの知見をさらに深掘りして、6月3日〜5日にニューヨーク州ブルックリンで開催される「Ragan's PR Daily Conference」でも講演する予定だとPR Dailyは伝えた。
情報ソース一覧
- ルールがあってもカスタムGPTは指示に従うのを忘れる。これによって軌道に乗せる方法 - PR Daily Even with rules, custom GPTs forget to follow instructions. This keeps them on track. - PR Daily www.prdaily.com
- カスタムGPT:関連性とパフォーマンスのために継続的な更新が不可欠な理由 - e-Discovery Team Custom GPTs: Why Constant Updating Is Essential for Relevance and Performance | e-Discovery Team e-discoveryteam.com
- AIが忘れるとき:Gen AIモデルをカスタマイズする際の隠れた落とし穴 When AI Forgets: The Hidden Pitfalls of Customizing Gen AI Models thedatascore.substack.com/p/when-ai-forgets-the-hidden-pitfalls
- あなたのカスタムGPTが「あなた」を忘れ続ける?簡単な修正方法はこちら Your Custom GPT Keeps Forgetting Who You Are? Here’s a Simple Fix pub.towardsai.net