「良いニュースなら広がる」は幻想か?681人調査が覆す企業ニュース拡散の常識

Emotions Drive Corporate News Virality: Why Some Stories Spread, Others Don't

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「良いニュースなら広がる」は幻想か?681人調査が覆す企業ニュース拡散の常識
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ポイント

  • IPRは企業ニュースが拡散するメカニズムを解明
  • 681人の調査で、企業の評価とニュースの話題が鍵と判明
  • 「怒り」はネガティブ情報、「称賛」はポジティブ情報の拡散を促します

PR(パブリックリレーションズ)の実証研究を専門に発表している非営利研究機関のIPR(Institute for Public Relations)は、企業ニュースのバイラル(ネット上での急速な拡散)メカニズムを解明した研究を2026年4月22日公開の記事で報じた。

研究を執筆したのはチャン・ウォン・チョイ博士(Chang-Won Choi, Ph.D.)で、成果は学術誌「Corporate Communications: An International Journal」に掲載されている。この研究が問いかけるのはシンプルな問いだ。企業のニュースは、どういう条件のときにネット上で広く共有されるのか。

「ポジ vs. ネガ」論争に実証で決着

従来の学術研究では、ニュースの拡散を左右するのが「ポジティブな内容」か「ネガティブな内容」かについて長年の対立があったという。一方の研究グループはポジティブな情報のほうが拡散しやすいと主張し、もう一方はネガティブな情報のほうが速く広まると主張していた。

今回の研究は、この単純な二項対立を超える実証データを示している。同研究によると、拡散のメカニズムを決定づけるのは「ニュースの内容が良いか悪いか」ではなく、「受け取った人がその企業をどう評価しているか」と「ニュースが何について書かれているか」の2点だという。

調査は2段階、合計681人を対象

研究は2つのパートで構成されている。

第1の研究では、米国の成人501人を対象にした調査を実施した。参加者はいくつかの実在する有名企業のうちの一社に対して、自分がどのような印象(道徳性と能力の高低)を持っているかを回答した。その後、その企業に関する実際のニュース記事を読み、内容をポジティブかネガティブかと判断したうえで、そのニュースを他者にシェアしたいかどうかを評価した。

第2の研究では、180人の米国人を対象にした制御実験を行った。参加者は架空の電池メーカーに関する架空のニュース記事を読んだ。記事はニュースの内容(ポジティブか否か)と話題の種類(道徳性に関するものか、能力・技術に関するものか)の組み合わせで4パターンに分けられ、読後の感情反応とシェア意欲を測定した。

「怒り」と「称賛」が拡散の引き金になる

研究から得られた主要な知見は3点にまとめられる。

第1に、企業への道徳的評価がシェア行動を強く規定するという。その企業を「道徳的に問題がある」と思っている人は、その企業に関するネガティブなニュースをポジティブなニュースよりも積極的にシェアする傾向があることが示された。一方、「道徳的に問題ない」と感じている人は、ポジティブ・ネガティブを問わず同程度にシェアする傾向があったという。注目すべきは、企業の「能力・技術力」への評価は、シェア行動の方向性に影響を与えなかった点だとしている。

第2に、ニュースが何について書かれているかによって、拡散パターンが変わるという。道徳性(倫理的問題、不正行為など)を扱う記事では、ネガティブなものがより広く共有される。一方、能力・技術(業績向上や技術的突破など)を扱う記事では、ポジティブなものがより広く共有される傾向があることが確認されたという。

第3に、その拡散パターンを引き起こす感情的な動因として「怒り」と「称賛(admiration)」の2つが特定されたという。企業の倫理的な不正に関するネガティブな記事を読んだ人は怒りを感じ、その怒りが「他の人に知らせなければ」という動機につながり、シェアにいたるとしている。一方、企業が倫理的な節目を達成したり、技術的なブレークスルーを成し遂げたりしたという内容のポジティブな記事を読んだ人は称賛の感情を抱き、シェアにつながったという。

IPRはこの知見に基づき、広報担当者に向けた具体的なアクションも示している。自社の道徳的評価を定期的に点検すること、道徳的評価が低いと感じられている状況では、ポジティブなニュースを発信しても拡散しにくい可能性があること、そして、ニュースリリースの内容(道徳性に関するか、能力に関するか)によって期待できる拡散の方向性が異なることを理解したうえで情報設計すべきだとしている。

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