著名歌手の即興ジングルに24時間で応答した菓子ブランドに学ぶ報道獲得の設計思想
Goldfish's 24-Hour Viral Response to Durand Bernarr's Impromptu Jingle
ポイント
- グラミー賞受賞者がGoldfishの即興ジングルをテレビで披露した
- GoldfishはAIを使わず、24時間以内に動画でこれに応じた
- この動画は合計45.3万人のフォロワーに公開された
PR・コミュニケーション業界の専門メディアであるPRWeekは、米国のスナックブランド「Goldfish(ゴールドフィッシュ)」をめぐる自発的なバイラル事例とブランド側の対応を、2026年5月18日公開の記事で報じた。
グラミー賞受賞者が番組内で即興ジングルを披露
記事によると、グラミー賞受賞シンガーのデュランド・バーナー氏が、朝の情報番組「Today(トゥデイ)」に出演した際、手元にあったGoldfishのパッケージを読み上げながら「100%本物のチーズ使用、人工添加物なし(100% real cheese, no artificial flavors)」という歌詞を即興で歌い上げたという。
Goldfishは金魚の形をした米国の人気スナッククラッカーブランドで、そのキャッチコピーは「笑顔で返すスナック(the snack that smiles back)」とされている。バーナー氏は事前に仕掛けられたコラボレーションとしてではなく、あくまで自発的にパッケージの文字を歌にしたという点が、今回の出来事の核心だとPRWeekは指摘している。
ブランドはAIなしで「24時間以内」に応答
Goldfishがこの動きに対してどう反応したかについても、PRWeekは詳報している。同ブランドはこの出来事の後、週末のうちにGoldfishのキャラクターが歌を披露する動画を制作・投稿し、キャプションに「あなたが私たちのことを歌ってくれたなら、私たちも歌い返すスナック(If you sing about us, we're the snack that sings back)」と記したという。この投稿は、GoldfishのTikTokとInstagramを合わせた合計45万3,000人のフォロワーに向けて公開された。
この対応を主導したのは、Goldfishのブランドパートナーである「Mischief」のインハウス制作チーム「The Candy Factory」だとPRWeekは伝えている。同エージェンシーのスポークスパーソンによると、アイデアの立案から承認、投稿までの一連のプロセスはすべて24時間以内に完了したという。
さらに注目すべき点として、PRWeekはGoldfishがこの返答動画の制作においてAIをまったく使用しなかったことを報じている。動画内でGoldfishのキャラクターが歌う歌詞は「100%本物の才能、音程を外した音符はゼロ(100% real talent, no notes out of key)」というもので、バーナー氏の即興ジングルの構造をそのまま借用しながら、AI全盛の時代への姿勢をさりげなく示した内容だったという。ボーカルは「クリエイターの一人のパリッとした声帯(crispy pipes of one of our creatives)」によるものだと、Mischiefはインスタグラムへの投稿で述べたとしている。
ブランドの「次の一手」として示された3つのアイデア
PRWeekはこの事例を受け、広報・マーケティング担当者向けに「ブランドとしてどう泳ぎ続けるか(just keep swimming)」という問いかけとともに、3つの具体的な展開アイデアを提示している。
1点目は、TikTokでの歌唱チャレンジの開催だ。TikTokの動画の85%が音楽オーディオと組み合わされているというデータを根拠に、ファンがバーナー氏のジングルを自分のスタイルで再現するチャレンジを企画し、バーナー氏本人とMischiefのクリエイターが優勝者を選ぶ形にするという案が示された。賞品としては、Goldfishのグッズに加え、バーナー氏が現在開催中の「You Gon' Grow Too」ツアーのチケットが提案されている。
2点目は、フルレングスのGoldfishシングル制作だ。PRWeekは2003年にマクドナルドがジャスティン・ティンバーレイク氏を起用して「I'm Lovin' It」のフル楽曲を制作した事例を引き合いに出し、このキャンペーンがその後22年間続くマクドナルドの最長キャンペーンへと発展したと指摘している。Goldfishも同様に、バーナー氏主演の本格的なミュージックビデオ仕立てのフル楽曲を制作できるとしている。
3点目は、Goldfish出張フードトラックと著名人参加型のカラオケポップアップイベントの開催だ。バーナー氏の即興ジングルが生まれたのがニューヨーク市の「Today」番組スタジオだったことを踏まえ、同番組とのパートナーシップのもとで市内各所にカラオケイベント会場を設け、Goldfishのサンプルを配布するフードトラックを配置するという案が示された。