社内広報を「有事の設計図」として機能させているか。地政学リスク時代に問われる従業員エンゲージメントの実践

Internal Comms in Geopolitical Crisis: Lessons from Middle East Companies

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社内広報を「有事の設計図」として機能させているか。地政学リスク時代に問われる従業員エンゲージメントの実践
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ポイント

  • Raganは地政学的危機下での従業員エンゲージメント知見を報じた
  • 中東4,000人超を擁するシーメンス・エナジーの実践論を紹介
  • 副社長は危機時の従業員の心理的安定を最重要視する

米国シカゴ拠点の企業コミュニケーション・PR専門メディアであるRagan Communications(以下、Ragan)は、地政学的危機下における従業員エンゲージメントの実践知見を2026年3月24日公開の記事で報じた。

執筆者はドイツのシーメンスAGから2020年にスピンオフした世界最大級のエネルギー技術専門企業、シーメンス・エナジー(本社:ドイツ・ミュンヘン、従業員約103,000人、2025年度売上高391億ユーロ=約6兆2,560億円 ※1ユーロ160円換算)の従業員エンゲージメント担当副社長、ヘバ・アブド・エル・ハミッド氏だという。同氏はドバイを拠点として中東・アフリカ地域の社内コミュニケーションを統括しており、今回の寄稿はRaganが運営するシニアコミュニケーター向けの会員制コミュニティ「Communications Leadership Council」を通じてグローバルに共有された。

「シミュレーションではない」危機の現場

アブド・エル・ハミッド氏が強調するのは、「危機対応とは訓練や想定シナリオの話ではない」という点だという。ドバイという都市に暮らしながら地政学的緊張が高まる地域で実際に働く従業員たちにとって、危機は日常と地続きであり、コミュニケーション担当者に求められるのは、教科書的な対応マニュアルではなく、不確実な状況の中で従業員の心理的安全性を担保しながら組織を動かし続けるリアルタイムの実践力だとしている。

同氏が拠点とするシーメンス・エナジーの中東・アフリカ地域は、29のオフィスに4,000人超の従業員を擁し、2025年度の受注額は90億ユーロ(約1兆4,400億円 ※同換算)に達するという。この規模の組織において、地政学的リスクが高まるたびに従業員の不安や情報の混乱が生じることは避けられない。だからこそ、現地の文化・言語・情勢を熟知したコミュニケーション責任者の存在が、従業員の業務継続と組織の安定に直結するとRaganは報じている。

現地責任者体制の強化と組織的背景

シーメンス・エナジーは2025年12月より、中東・アフリカ地域のマネージングディレクターにフセイン・シュクリー氏を新たに任命し、UAEを拠点として地域全体の経営統括を担わせているという。組織のトップが現地に根を置く体制は、危機時の意思決定スピードを高めるうえで重要な要素とされている。

業界への示唆——インターナルコミュニケーションの再定義

Raganはこの事例を通じて、グローバル企業における「社内広報」の役割が根本的に変わりつつあると示唆している。従来の社内広報は、経営方針の周知や社内報の発行といった比較的平時の業務として位置づけられることが多かった。しかし今日のように地政学的リスク・自然災害・パンデミックといった不確実性が常態化した環境では、社内広報担当者は「危機時に従業員をつなぎ止める最後の砦」としての機能を果たす存在になっているとしている。

アブド・エル・ハミッド氏の発信が業界で注目を集めたのは、理論的なフレームワークではなく、「今自分がいる場所で起きていること」を具体的な実務経験として語った点にあるとRaganは伝えている。危機は訓練の中にはなく、現実の中にある——そのメッセージは、世界各地に拠点を持つ多国籍企業の広報・コミュニケーション担当者に向けた問いかけとして、Raganは記事を結んでいる。

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