LEGOアニメで描いた戦争動画が10億回拡散、広報の危機管理常識を覆す新潮流
LEGO Missile Video Hits 1 Billion Views: Why Your Crisis Manual Fails
ポイント
- PR Dailyは、ノスタルジアが危機コミュニケーションの武器になる警告を報じた
- イラン関連集団Explosive MediaのLEGO動画は、ミサイル攻撃を描写し10億回再生された
- この拡散は、ボットでなく西洋の若者層の自発的なリポストで引き起こされた
PR・コミュニケーション業界専門メディアのPR Dailyは、「The School of Impactful Communication」で学部長を務めるイショラ・ナシルディーン・アヨデレ氏による寄稿記事を2026年8月22日に公開した。テーマは、ノスタルジア(幼少期への郷愁)が危機コミュニケーションにおける「武器」として機能しつつあるという警告だ。
LEGOで戦争を描く:10億回再生の衝撃
記事の起点となっているのは、イラン国家と関連があるとされるクリエイター集団「Explosive Media」が制作したストップモーション動画シリーズだ。テヘランを拠点とするこのチームの規模については、ソースによって記述に差があり、アヨデレ氏の寄稿では「10人未満で、ほとんどが19歳から25歳」と記載される一方、Al Jazeeraの報道では「10人全員が19歳から25歳」と記載されている。本記事では両者を踏まえ、約10人の若者で構成されたチームとして扱う。
彼らが制作した動画は、LEGOブロックを使ったアニメーションでイランによるイスラエルおよびアメリカへのミサイル攻撃を描写したものだ。映像の文体は土曜朝の子ども向けアニメを思わせるもので、サウンドトラックにはヒップホップが使われた。ピクサー映画に近い照明処理、ミーム文化に精通した編集、そして真剣さと皮肉の境界線をあえて曖昧にした表現が組み合わされているという。
カナダ政府の「Rapid Response Mechanism」の分析によると、公開から最初の1か月で確認済みの再生回数は8,300万回に達した。さらに、ネットワーク全体の推計ではその数字は10億回を超えたという。アヨデレ氏が特に強調するのは、この拡散の多くがボット(自動化されたアカウント群)ではなく、コンテンツを自発的にリポストしたり二次創作したりした西洋の10代・若者層によって生み出されたという点だ。
コンテンツが「自分で感染者を集めた」
アヨデレ氏は、このLEGO動画の拡散メカニズムを「病原体」になぞらえて分析している。従来の危機管理が想定する「第一の感染爆発」とは、爆撃・犠牲者・公式声明・記者会見・ファクトチェックといった物理的・論理的な次元での対応だ。これは測定可能であり、既存のダッシュボードに収まるとしている。
しかし今回のLEGO動画が引き起こしたのは「第二の感染爆発」だとアヨデレ氏はいう。それは意味そのものの静かな書き換えだ。この静かな拡散は、プラットフォームの規約や国境、ファクトチェッカーに許可を求めることもなかった。コンテンツが乗り物にしたのは、かつては安全だと思われていたシンボルたちだ。子ども時代のおもちゃ、ヒップホップのビート、土曜朝のアニメの文法。コンテンツは自らの「運び手」を集め、その運び手たちは自分が何かを拡散しているという自覚さえ持っていなかったという。
コンテンツモデレーション(投稿審査)システムがこの動画の拡散を止められなかった理由についても言及がある。それらのシステムは「第一の感染爆発」に対応するために設計されており、血や遺体、露骨な戦争映像に反応するよう訓練されている。しかしプラスチックブロックがアニメ的な炎の中で爆発する映像を「有害」と判定することは難しかった。暴力は視覚的なものではなく、象徴的なものだったからだ。そして象徴的な暴力は、「遊び」のように感じられるため、より速く拡散するとアヨデレ氏は指摘している。
広報担当者はいま何をすべきか
アヨデレ氏はこの状況を「政府だけの問題ではない」と明言している。企業の評判、ステークホルダーからの信頼、ブランド認知を管理する立場の人間すべてにとって、同じダイナミクスがすでに企業の危機対応、製品の欠陥問題、経営幹部のスキャンダルの文脈でも機能しているという。違いは予算の規模だけだとしている。
記事ではPR実務者が取るべき三つの方向転換が示されている。第一は、ナラティブ(物語)を病原体として扱うことだ。拡散のベクター(経路)、プラットフォーム、感情的トリガーを追跡し、1回のシェアで何人の新しい受け手に届くかという「再生産率」を把握する。そしてLEGO、ピクサー、マインクラフト、スタジオジブリといった「スーパースプレッダー的美学」を特定する。これらは幼少期の感情的な安心感でイデオロギーを包むことで、受け手の認知的抵抗を下げる効果があるとしている。
第二は、ファクトだけでなく感情で勝負することだ。アヨデレ氏は、ホワイトハウスが独自のシネマティック映像を制作して対抗したことを引き合いに出し、「より優れた美学はファクトチェックに勝る」と述べている。危機において最も感情的に一貫した物語が勝つ。自社の反論が「PDF」のように感じられる一方で、相手側が「ブロックバスター映画」のように感じられるなら、その反論は機能しないとしている。
第三は、ステークホルダーの感情的な地形を継続的にマッピングすることだ。Explosive Mediaのチームは、危機が起きる前から米国の若者文化を人類学的な精度で研究していたとアヨデレ氏は分析している。多くの組織は危機が起きてから初めてオーディエンスを研究し始めるが、それでは遅い。「評判は預金口座のようなもの。平時に積み立てるからこそ、困難なときに引き出せる」と述べている。
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情報ソース一覧
- 戦争ごっこ:懐かしさが危機コミュニケーションの武器となる方法 - PR Daily Playing war: How nostalgia became a weapon in crisis communication - PR Daily www.prdaily.com
- 「皆に復讐を」:イランのレゴ動画がいかにトランプに対するナラティブ戦争に勝利したか | 米国-イスラエルとイランの戦争ニュース | Al Jazeera ‘Vengeance for all’: How Iran’s Lego videos won narrative war against Trump | US-Israel war on Iran News | Al Jazeera www.aljazeera.com
- イランのレゴ風戦争動画が拡散、その裏のチームに会う As Iran's Lego-Style War Videos Go Viral, Meet The Team Behind Them www.ndtv.com
- エクスプローシブ・メディア - Wikipedia Explosive Media - Wikipedia en.wikipedia.org/wiki/Explosive_Media
- イランのレゴ風戦争動画が拡散、その裏のチームに会う As Iran's Lego-Style War Videos Go Viral, Meet The Team Behind Them www.ndtv.com
- イラン戦争:専門家が強力なプロパガンダと評するレゴ風AI動画を作る男に話を聞いた Iran war: We spoke to the man making Lego-style AI videos that experts say are powerful propaganda www.bbc.com/news/articles/cjd8jrd1vnyo
- イラン、レゴ動画でミナーブ攻撃をイスラエルと米国に非難 | The Jerusalem Post Iran blames Israel, US for Minab strike in Lego video | The Jerusalem Post www.jpost.com/middle-east/iran-news/article-889531
- イラン、ドバイが爆破され英国のキプロスにあるRAF基地が襲撃されるばかげたレゴ戦争プロパガンダ動画を公開 Iran shares ridiculous LEGO war propaganda vid showing Dubai being blown up and Britain's RAF base in Cyprus blitzed www.the-sun.com/news/16059428/iran-lego-propaganda-dubai-britain-raf/
- イラン国営メディアがレゴプロパガンダ動画を共有 Iran State Media Share Lego Propaganda Video with... www.reddit.com
- イランの米国・イスラエルへのレゴ攻撃:子供たちの死に復讐する兵士、逃亡するトランプ、ネタニヤフ、アラブ人を示す動画 Iran's Lego Attack on US, Israel: Video Shows Soldier Avenge Kids' Deaths, Trump, Netanyahu, Arabs on the Run www.hindustantimes.com