AIは「効率化の道具」だけではない、埋もれた評価データを自己成長に変える新発想
Leverage AI to Uncover Your Strengths from Accumulated Performance Reviews
ポイント
- 米Ragan Communicationsは2026年9月8日、PwCのコミュニケーション部門リーダーによるAI活用事例を報じた
- リーダーは過去の評価シートをAIに読ませ、自身の強みを再発見できる
- AIは自己認識を深め、得意ゾーンをマッピングするツールとなる
米国のPR・コーポレートコミュニケーション専門メディアRagan Communicationsは、PwCのコミュニケーション部門リーダーによるAI活用事例を2026年9月8日公開の記事で報じた。
AIを「自己認識ツール」として使う発想
記事を執筆したのは、PwCの米国クロスコマーシャル・コミュニケーションズ部門のリーダー、ウィル・ホッジズ氏だ。同氏は、DiSC、Myers-Briggs、360度評価、StrengthsFinderといったリーダーシップ評価ツールを多くのビジネスパーソンが受検しながら、その結果を十分に活用できていないと指摘する。「パソコンのどこかのフォルダに保存したまま、2017年以降一度も開いていない可能性が高い」とホッジズ氏は述べているという。
同氏は過去1年間、AIに関する議論の多くが「効率化・自動化・スピード」に集中していたことを受け、異なる問いを立てたとしている。「AIはリーダーの自己認識を深めることができるか。さらに言えば、自分がどこで突出した価値を生み出しているかを理解し、チームメンバーにも同じ気づきを与えられるか」というものだ。
85年間破られていない記録から学ぶ「得意ゾーン」の哲学
記事はまず、メジャーリーグの伝説的打者テッド・ウィリアムズの逸話を導入に使う。1941年以来、シーズン打率.400超えを達成した選手は誰もいないという。1941年の同年、メジャーリーグ全体の打率は.267だったとされており、ウィリアムズの.406という数字がいかに突出していたかが分かるとしている。
ホッジズ氏が注目したのは、その最終戦のエピソードだ。シーズン最終日にちょうど.400で迎えたウィリアムズは、ベンチに座ったまま打率を守る選択肢を与えられた。しかし彼はダブルヘッダー両試合に出場し、8打数6安打で.406に引き上げてシーズンを終えたという。ホッジズ氏はこれを「リスクを取った」のではなく「自分がうまくいくと分かっているシステムを信じた」行動だと解釈していると記事は伝える。
ウィリアムズは著書「The Science of Hitting」の中で、ストライクゾーンを打率ごとにマッピングし、.400を打てる球の位置と打率が急落する球の位置を可視化していたとされている。さらに投資家のウォーレン・バフェットも、このアプローチを自身の「コンピテンシー・サークル(得意の輪)」投資哲学に影響を与えたものとして引用しているという。この一連の考え方を踏まえ、ホッジズ氏は「リーダーも自分の得意ゾーンをマッピングできるのではないか、そしてAIはそれを助けられるのではないか」と考えたとしている。
AIで自分の強みを4ステップで再発見する
ホッジズ氏が実験を経て確立したという手法は、4つのステップで構成されるとしている。
第1ステップは「証拠を集める」だ。リーダーシップ評価の結果、上司からのフィードバック、同僚の観察コメント、自己省察のメモなど、すでに手元にある情報をAIに入力するという。目的は新たな性格ラベルを得ることではなく、繰り返し現れるパターンを探すことだとしている。「同僚から『コラボレーションが得意』『人との関係が上手い』と継続的に言われるなら、それをデータとして扱え」とホッジズ氏は述べているという。
第2ステップは「AIにパターンを問い詰めさせる」だ。AIに情報を要約させるのではなく、コーチ役として質問を投げかけさせるよう指示するという。記事中に紹介されているプロンプト例は次のとおりだ。「共有したフィードバックを確認し、繰り返し現れるテーマを特定したうえで、そのパターンが本物かどうかを検証するために、一問ずつ質問してほしい」。AIから投げかけられる具体的な問いとして、「どんな仕事をしているときに活力を感じるか」「どんな仕事が一貫して際立った成果を生み出しているか」「得意なのに消耗する仕事は何か」「他の人が何を任せてくることが多いか」などが挙げられているとしている。
第3ステップは「ソフトスキルを使えるスキルに翻訳する」だ。ホッジズ氏が最も価値があったと述べるプロセスで、「共感力がある」「人と関わるのが上手い」といった抽象的な評価を、具体的な行動能力に変換するという。例えば「人付き合いが上手い」は「意見の合わない関係者間で合意を形成する能力」に、「プレッシャーに強い」は「混乱した状況でも判断が明確になる能力」に読み替えられるとしている。多くのリーダーシップ評価が性格の描写で終わっているのに対し、「その特性が何を可能にするか」を問うことがより有用だという。
第4ステップは「再利用できる形にする」だ。ホッジズ氏はこれらの入力情報を元に、カスタムGPTを構築し、日常業務の思考パートナーとして活用しているとしている。さらにチームメンバーとの育成面談でも同じ問いを使うようになったという。弱みや課題の話から始めるのではなく、強みのパターンを起点にした対話に切り替えることで、開発会話の質が変わったと述べているとしている。
情報ソース一覧
- AIを活用してリーダーシップの強みを再発見する事例 - Ragan Communications The case for using AI to rediscover your leadership strengths - Ragan Communications www.ragan.com
- プロンプトエンジニアリングは良質なコミュニケーションに過ぎない - PR Daily Prompt engineering is just good communication - PR Daily www.prdaily.com/prompt-engineering-is-just-good-communication/
- AIを活用してリーダーシップの強みを再発見する事例 - PR Daily The case for using AI to rediscover your leadership strengths - PR Daily www.prdaily.com
- AIがメディアアウトリーチを改善できる3つの領域 - PR Daily Three areas where AI can improve media outreach - PR Daily www.prdaily.com/three-areas-where-ai-can-improve-media-outreach/
- Raganの2026年AIとコミュニケーションレポート Ragan's 2026 AI and Communications Report www.ragan.com/white-papers/ragans-2026-ai-and-communications-report/
- なぜあなたはまだ役員会で真剣に受け止められていないのか Why you still aren't being taken seriously in the boardroom www.ragan.com/rdh/
- AIの筋肉を鍛える:PwCのAI理論と日常利用を結びつけるアプローチ - Ragan Communications Training the AI muscle: PwC’s approach to bridging AI theory and everyday use - Ragan Communications www.ragan.com/pwc-bridging-ai-theory-and-everyday-use/
- コミュニケーションリーダーがAI支援コンテンツを活用するためのベストプラクティス Best Practices For Comms Leaders To Harness AI-Assisted Content www.forbes.com
- 企業コミュニケーションはAIに追いつく:リーダーが道を示す Corporate Comms Catch Up On AI: Leaders Show The Way www.bcg.com