AI導入企業の8割超が成果実感なし、報道獲得を伸ばす少数派との決定的な差
NBER Survey: AI Speeds Up PR Tasks, But Productivity Falls Short
ポイント
- PRNEWSはAIがPR業務を高速化するが生産性向上とは限らないと報じた
- NBER調査ではAI導入企業の80%超が生産性向上を実感していない
- 一方で先進企業ではメディア掲載率が3~5倍向上している
米国のPR業界専門メディアであるPRNEWS(1989年創刊、PR実務者向けの業界誌・オンラインプラットフォーム)は、AIがPRチームの業務を高速化することと、組織全体の生産性を向上させることは必ずしも同義ではないと2026年3月16日公開の記事で報じた。同記事は、AI導入が業界全体に広がる一方で、その恩恵が一部の先進的企業に偏在しており、多くのPR担当者が期待通りの成果を得られていない実態を詳細に分析している。
この報道の根拠となったのが、NBER(National Bureau of Economic Research/全米経済研究所。1920年創設の米国の非営利民間経済研究機関で、マクロ経済・労働・技術革新など幅広い分野で権威ある学術調査を発表している)が実施した調査だという。同調査によると、AIを導入した企業の80%以上が、導入後も目立った生産性向上を実感していないと報告したという。世界全体で生成AI投資を計画中の企業が92%に上る状況にもかかわらず、大多数の組織でその投資が具体的な成果に結びついていない実態が浮き彫りになった。
一方で、AI活用が進んでいる先進的なPR会社では、目覚ましい成果が報告されているという。PRNEWSの記事が紹介するデータによれば、こうした企業ではメディア掲載率がAI活用前と比べて3〜5倍に向上し、キャンペーンの実行速度が70%改善され、手作業によるリサーチ時間が60〜80%削減されたという。ただし、これらの数字は50社以上、200キャンペーン以上のデータから算出されたものであり、成果を上げているのはあくまでAI活用を戦略的に推進した一部企業に限られると同記事は指摘している。
AIが生産性向上に直結しない理由について、世界的な経営・ビジネス専門誌であるHarvard Business Review(ハーバード大学ビジネススクール発行。以下、HBR)が2026年2月に掲載した分析が参考になるという。HBRによれば、AIはチームの業務量を減らすのではなく、より複雑なアウトプットを次々と生み出すことで、かえって担当者の負担を増大させているという。つまり、AIによって1人あたりの作業スピードは上がっても、こなすべきタスクの総量もそれに比例して膨らむため、結果として業務過多の状態が解消されないということだ。世界トップクラスのAI研究機関であるスタンフォード大学AI研究部門も、2026年においてもプログラミングなど特定分野を除き、多くの企業でAIによる生産性向上の実感は限定的にとどまるという見解を示しているという。
メディアリレーションズの観点からも、AI導入が新たな課題を生み出していると同記事は報じている。2026年には52%のPR会社と42%のインハウス(企業内)広報チームが、業界ニュースを担当するジャーナリストの数が減少していることへの懸念を示しているという。さらに、AI生成によるピッチ(メディアへの取材提案)が急増したことで、記者一人ひとりへのアクセスがこれまで以上に難しくなっているという指摘もある。ピッチの量が増えれば増えるほど、記者が個々のメッセージを読む時間は相対的に減少し、結果としてメディア掲載の難易度が上がるという構造的矛盾が生まれているとPRNEWSは分析している。
こうした状況においても、アーンドメディア(広告費を払わず、記事として掲載されるメディア露出)の戦略的価値は高まっているという。同記事によれば、AI生成の回答で引用されるコンテンツの82%がニュース記事などのアーンドメディアであることが明らかになっており、ChatGPTをはじめとする生成AIが普及した時代において、信頼性の高いメディアへの掲載がより重要な意味を持つようになっているとしている。AIマーケティング市場の年平均成長率(CAGR)は2034年まで26.7%で推移すると予測されており、PR業界においてもAI関連投資は今後も拡大が見込まれるという。一方でエージェンシー(PR代理店)の41%は、ルーティン的な戦術業務をAIに委ねながら、自らは戦略立案やアドバイザリー機能へとシフトしつつあるとも報じられている。
情報ソース一覧
- AIはPRチームを加速させるかもしれないが、生産性を向上させるのか? AI May Speed Up PR Teams, But Does It Make Them More Productive? www.prnewsonline.com
- PRエージェンシーがAIをどのように活用するか:ベストプラクティス、ツール、実際の成果 [2026年ガイド] - OBA PR How PR Agencies Use AI: Best Practices, Tools & Real Results [2026 Guide] - OBA PR obapr.com
- PRトレンド2026:広報の次に来るものの概要 | Onclusive PR Trends 2026: An Overview of What's Next for Public Relations | Onclusive onclusive.com/resources/blog/pr-trends-2026/
- 2026年PR予測:広報の未来 | PRGN 2026 PR Predictions: The Future of Public Relations | PRGN prgn.com/prgnfuture/2026-pr-predictions/
- 5人の業界専門家による2026年のPRトレンド - PR Daily 2026 PR trends, according to five industry experts - PR Daily www.prdaily.com/2026-pr-trends-according-to-five-industry-experts/
- 2026年の予測:AIが広報に与える影響 - Worldcom Group 2026 Predictions: AI's Impact on Public Relation - Worldcom Group worldcomgroup.com/insights/2026-predictions-ais-impact-on-public-relation/
- research / ai productivity boom dont count your productivity data chickens budgetlab.yale.edu
- 2026 / 02 / ai doesnt reduce work it intensifies it hbr.org/2026/02/ai-doesnt-reduce-work-it-intensifies-it
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