広報プロの6割が毎日「圧倒される」と感じる職場で制度が機能しない本当の理由
The Cost of Silence: Industry Survey Highlights Mental Health Issues for PR Professionals
ポイント
- 米国の広報業界でメンタルヘルス問題と「沈黙のコスト」が指摘された
- 職場では約40%の労働者が判断を恐れ、メンタルヘルスを話せない
- 広報専門職の60%が圧倒感を経験し、制度も偏見で使われていない
米国の広報・コミュニケーション業界向け専門メディアのPR Dailyは、2026年6月22日公開の記事で、広報・コミュニケーション業界における精神的健康(メンタルヘルス)の問題と「沈黙のコスト」について報じた。記事は上級コミュニケーション業界専門家・アドバイザー・教育者のスキ・サーニ(Sukhi Sahni)氏が執筆し、複数の業界関係者による実体験を交えて構成されている。
サーニ氏は記事の冒頭で「広報・コミュニケーションの仕事は、困難な真実を語ることを生業にしている。しかし、自分自身のメンタルヘルスについては、私たちのほとんどが口を閉ざす」と問題提起している。同氏は自身がキャリアの中でも最も困難な時期に母を亡くしながら「大丈夫です」と言い続けた経験を持つと明かし、その沈黙が何をもたらしたかを自ら問い直したという。
数字が示す「意識と行動のズレ」
記事が引用する2025年NAMI(National Alliance on Mental Illness=米国精神疾患当事者・家族支援を行う非営利団体)の「職場メンタルヘルス世論調査」によると、米国の労働者の4人に3人が「職場でメンタルヘルスについて話すことは適切だ」と考えているという。しかし実際には5人に2人が「判断されることを恐れて話せない」と答えており、上級管理職に自らの不調を伝えると答えた労働者はわずか28%にとどまったとしている。
PR・コミュニケーション業界に限定したデータも示されている。PR担当者向けのSaaSプラットフォームを提供するPR.coが2025年に発表した業界レポートによると、広報・コミュニケーション専門職の約60%が、毎日または週に複数回、「圧倒される感覚(overwhelm)」を経験していると報告しているという。最大のストレス要因は業務量そのものではなく、「突発的な対応要求」「不明確な期待値」「じっくり考える時間の欠如」といったリアクティブ(受け身)な働き方であると同レポートは指摘しているとされる。
制度はある、使えないだけ
「制度が整っていないから使えない」という問題でもない、とサーニ氏は論じる。AI技術を活用した従業員向けメンタルヘルスプラットフォームのSpring Healthが2026年に発表した職場メンタルヘルス報告書によると、中大規模企業の98%が従業員支援プログラム(EAP)を提供しているにもかかわらず、34%の従業員は自分がそのサービスを利用できることを知らないという。制度の欠如ではなく、「スティグマ(偏見・烙印)なしにそれを使う許可」が欠けているのだと、記事は強調している。
コーポレートコミュニケーション戦略メディアのSpin Sucksの創業者兼CEOのジーニー・ディートリッヒ(Gini Dietrich)氏は、企業が実施しがちなEAPの案内、瞑想アプリの提供、ウェルネスデーの設定といった施策を「問題を装飾しているだけ」と批判したという。日常の職場環境が依然として混乱していたり、過度な働きを称賛する文化が残ったりしている限り、こうした施策に意味はないとディートリッヒ氏は述べたとされる。
当事者が語る「沈黙の実態」
リーダーシップコーチのブランディ・L・ホルダー(Brandi L. Holder)氏の体験談は記事の核心を成している。ホルダー氏はかつてエグゼクティブ契約のもとで働く傍ら、末期疾患の夫の介護をしていたが、誰にも伝えなかったという。夫の葬儀でスピーチをしている最中に職場からの電話が鳴り、「何の危機に対応すべきか」を計算していたと明かした。
「ミッションのために身を削ることが評価される文化では、弱さのように見えるものはキャリアリスクになると信じてしまう。だから『大丈夫』を演じ続ける」とホルダー氏は語ったという。沈黙は自分を守っていたのではなく、避けられないことを遅らせていただけだったと気づいた後、同氏は退職し、カウンセラーとコーチを見つけ、今日に至ると記事は伝えている。
NAMIのデータによると、米国成人の5人に1人が毎年何らかの精神疾患を経験しているという。サーニ氏はこれを「20人の広報担当者が一室にいれば、統計的に4人は今この瞬間メンタルヘルスの問題を抱えている。そして、ほとんどの人が職場では誰にも話していない」と置き換えて示している。
記事はまた、PR業界でシニア人材が「フラクショナル(分散型)」の働き方に移行する動きも取り上げている。LinkedInプロフィールでフラクショナル職を記載している件数が、2年前の2,000件から11万件超へと急増したとされており、その背景には単なるキャリアチョイスだけでなく、組織の文化に耐えられなくなった側面があるとサーニ氏は示唆している。
情報ソース一覧
- 沈黙を破る:メンタルヘルスに関する会話が重要な理由 Breaking the Silence: Why Mental Health Conversations Matter www.synergyetherapy.com
- 沈黙がもたらす本当の代償:コミュニケーターと創業者がメンタルヘルスと癒しの物語を語る - PR Daily What silence really costs: Communicators & founders share their stories of mental health and healing - PR Daily www.prdaily.com
- メンタルヘルスにおける沈黙の影響と、話すことがなぜ助けになるのか The Impact of Silence on Mental Health and Why Talking Helps texaspsychiatrygroup.com
- 企業コミュニケーションと沈黙の代償 Corporate Communications and the Cost of Silence spinsucks.com/communication/corporate-communications-silence-cost/
- 何も言わない技術 - PMC The Art of Saying Nothing - PMC pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9619411/
- TikTok - あなたの1日を創造する TikTok - Make Your Day www.tiktok.com/@steven/video/7586777802049899798
- 沈黙は素晴らしいコミュニケーションツールになり得るが、決して罰として使ってはいけない。 Silence can be a great communication tool, but never as a punishment. www.facebook.com
- 会話は居心地が悪いと感じることがあるが、沈黙はしばしばより重い代償を伴う。 Conversations can feel uncomfortable, but silence often carries a heavier cost. www.facebook.com
- 組織における沈黙の代償:系統的レビュー The Costs of Silence in Organizations: A Systematic Review www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/23311908.2026.2635167