世界最大の広告グループがボーナス50%削減、報酬設計の根本転換が日本の広報戦略に迫る問い

WPP halves bonus pool to ¥36.2bn, transforming into AI-led 'single company'

ソースに基づく報道記事 10件の情報源

ポイント

  • WPPは2025年ボーナス総額を約362億円に半減した
  • これは前年比50%減で、売上高も10.4%減を記録した
  • AI主導の「一体型企業」への転換を目指す改革の一環だ

英国のPR・広告業界専門誌PRWeek(ロンドン本社、1984年創刊)は、世界最大級の広告・PR持株会社WPP(1971年創業・ロンドン本社、世界100カ国以上で事業展開)が2025年のボーナス総額を前年比50%削減し、1億8,100万ポンド(約362億円 ※1ポンド200円換算)に圧縮したと2026年3月3日公開の記事で報じた。

WPPの2025年の年間売上高は101億ポンド(約2兆200億円)で、前年比10.4%減を記録した。PRWeekによると、この落ち込みは新型コロナウイルスの感染拡大が経済に深刻な打撃を与えた2020年以来、最悪の業績となったという。同年の営業利益は3億8,200万ポンド(約765億円)で、前年比70%超の減益となったと報じられている。従業員数も2025年末時点で前年比8.7%減の98,655人となり、グループ全体として10万人を割り込んだ。ボーナスの削減と並行して、一部従業員については給与見直しの実施時期を2026年5月または2027年1月に延期したとしている。

ボーナス総額の推移を見ると、その削減幅の大きさがより鮮明になる。WPPのボーナス総額は業績が好調だった2022年に4億2,400万ポンド(約850億円)のピークを記録していた。今回の1億8,100万ポンドという水準は、ピーク時からわずか3年で半分以下に落ち込んだ計算となる。PRWeekはこの大幅な削減について、単なる業績悪化への対応にとどまらず、報酬体制そのものの構造転換を意図したものだと報じている。

今回の報酬改革を主導しているのが、2025年9月にCEOに就任したシンディ・ローズ氏だ。同氏はマイクロソフト英国CEOなどテクノロジー業界での経歴を持つ経営者で、WPPの前身体制とは異なる発想で経営改革を推進している。PRWeekによると、ローズCEOはかねてより「われわれはもはや持株会社ではない」と公言しており、各子会社が独立して運営されてきた従来の「持株会社モデル」から、グループ横断での協業を重視する「シングルカンパニー(一体型企業)モデル」への転換を鮮明にしているという。

この組織転換を具体化するのが「Elevate28(エレベート28)」と呼ばれる経営変革計画だ。PRWeekの報道によると、同計画は2028年までの完了を目指しており、AI(人工知能)の積極活用と組織統合を通じて年間6億7,600万ポンド(約1,352億円)のコスト削減を達成することを目標に掲げているという。組織面では、クリエイティブ・メディア・テクノロジー・PRといった機能を束ねた4部門体制に再編する方針が示されている。WPPの傘下には、Burson(バーソン、BCWとHill+Knowlton Strategiesが2024年に合併して発足したグローバルPRファーム)、FGS Global(FGSグローバル、コーポレートコミュニケーション・財務PR専門のコンサルティングファーム)などの著名なPRファームが名を連ねており、これらを含む全グループ会社が再編の対象となる。

WPPを取り巻く競争環境も急速に変化している。フランス・パリ本社の世界大手広告持株会社ピュブリシス(Publicis)は近年AI投資と業績の両面でWPPを上回っており、PRWeekによると投資家の間ではWPPのAI戦略の実行力が企業価値を直接左右する局面に入っているとの見方が広がっているという。こうした競合との差を埋めるためにも、Elevate28を通じたAI主導の効率化は急務となっている。

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