広告主1000社超がXへの出稿停止で訴えられた反トラスト訴訟、連邦裁判所が棄却
X Corp. Lawsuit Against Advertisers Dismissed, Upholding Industry Self-Regulation on Brand Safety
ポイント
- X Corp.の独禁法違反訴訟が連邦裁判所で棄却された
- 1,000社超の広告主が広告停止、Xは「ボイコット共謀」を主張
- 裁判所は業界自主規制の正当性を認め、Xの広告収入は45%減となった
米国の法律専門メディア「Courthouse News Service」は、X(旧Twitter)が大手広告主や業界団体を相手取った反トラスト法(独占禁止法)訴訟が連邦裁判所に棄却されたと、2026年3月30日公開の記事で報じた。
訴訟の背景と主な争点
この訴訟は、X(旧Twitter)を運営するX Corp.が2024年に提起したものだという。イーロン・マスク氏が2022年10月に約440億ドル(約6兆6,000億円 ※1ドル150円換算)でTwitterを買収しXに改名した後、コンテンツモデレーション(有害な投稿の審査・削除)の基準が大幅に緩和された。これに反発した1,000社以上のブランドが広告出稿を停止したとされる。
出稿停止の動きを主導したとされるのが、1955年設立の国際業界団体WFA(World Federation of Advertisers、世界広告主連盟)傘下のGARMという組織だ。GARMはWFAが2019年に設立したブランドセーフティ推進イニシアチブで、広告が有害コンテンツの隣に表示されないよう業界共通の安全基準を策定していた。英蘭系の世界最大級の消費財メーカーであるユニリーバ(2024年の広告費は約86億ドル、約1兆2,900億円換算)や、スニッカーズやM&Mで知られる米国大手食品・菓子メーカーのマーズ(2024年の広告費は約21億ドル、約3,150億円換算)など、年間広告支出の合計が約1兆ドル規模に上る100社超の広告主を代表していたとされる。
X Corp.はこれら広告主とWFA・GARMが共謀してXへの広告出稿を組織的に停止したことが、競争を不当に制限する独占禁止法違反の「ボイコット共謀」にあたると主張していた。
裁判所が「棄却」を下した意味
同記事によれば、米国連邦裁判所はX Corp.の主張を認めず、訴訟を棄却したという。GARMはすでに2024年8月にXからの法的圧力を受けて自主的に活動を停止していたが、今回の棄却判決により、広告主が集団でプラットフォームにブランド安全基準を求める行為は独占禁止法上、違法ではないとの法的見解が示された形となった。
PR Weekも同日、同訴訟の棄却を報じており、「GARM型の業界自主規制連合の正当性が法的に再確認された」という業界関係者の受け止めを伝えている。
Xの広告事業をめぐる数字
マスク買収後のXの広告事業は深刻なダメージを受けてきたとされる。市場調査会社eMarketerのデータによれば、Xのグローバルデジタル広告市場シェアは2025年時点で約4%にとどまっており、Meta(同22%)やGoogle(同28%)との差は拡大している。
Xの2023年グローバル広告収入は約25億ドル(約3,750億円換算)と前年比45%減を記録したとも報じられており、マスク買収直後の2022年末以降には米国内だけで最大50%の広告収入減があったとされる。こうした状況にもかかわらず、X Corp.がGARMとWFA、個別広告主を相手取った訴訟を起こしたことは、業界全体に自主規制への萎縮効果をもたらすとの批判も呼んでいた。
米国のデジタル広告業界の標準化・普及を推進するIAB(Interactive Advertising Bureau、インターネット広告協会)は、「業界自主規制への萎縮効果」を警告している。また、2025年のグローバルデジタル広告費は7,400億ドル(約111兆円換算)と前年比12%増に達したとされており、棄却判決を受けてもプラットフォームガバナンスと広告主の関係性をめぐる議論は続くとPR Weekは指摘している。