肥満治療薬メーカーがファッションイベントを冠協賛した落とし穴
Obesity Drug Maker's Pitfall in Sponsoring Fashion Event
ポイント
- 米国製薬会社イーライリリーがVogueイベントを協賛
- 摂食障害支援団体は肥満治療薬メーカーとファッション誌の組み合わせを批判した
- イベントは2026年9月22日に開催され、その意味が問われている
米国の製薬会社イーライリリーが、ファッション誌Vogue(コンデナスト社発行)の大型イベント「Vogue World: Milano」に協賛したことを受け、摂食障害支援団体や研究者から批判の声が上がっている。英国の報道機関ガーディアンが2026年9月27日に報じ、PR業界の専門メディアPR Dailyが2026年9月28日、広報担当者への示唆としてこの事例を取り上げた。
イベントは2026年9月22日、ミラノのガレリア・ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世で開催された。毎年各都市で行われるVogue Worldとしては5回目の開催で、モデルのジジ・ハディッドや歌手のジェニファー・ロペスらが登場した。イーライリリーは公式プログラムに「ファッション隣接」スポンサーとして、スポーツウェアブランドのALO、eBay、Meta Glassesと並んでクレジットされた。
協賛の中身と批判の焦点
イーライリリーは肥満・糖尿病治療薬のMounjaro(マンジャロ)や、2026年4月に米国で承認された経口薬のFoundayoを手がける製薬会社だ。今回の協賛では特定の薬品を直接宣伝する内容はなく、コンデナスト側の関係者はガーディアンの取材に「リリー社全体のブランドに焦点を当てたもので、特定の薬品に紐づくものではない」と説明した。
VogueはイーライリリーとともにVogueウェブサイト上で「Portrait of Progress(進歩の肖像)」と題した動画も公開した。ガーディアンによれば、動画では「150年にわたりリリーは医療を革新してきた」というナレーションのもと、ファッションと医療に関連した映像が流れる構成で、痩身や減量薬への直接の言及はなかった。
批判の矛先が向いたのは、協賛の内容よりも「組み合わせが生む意味」だった。ラトガーズ大学の心理学教授シャーロット・マーキー氏はガーディアンの取材に対し、「痩身が再び明示的に重要な目標として位置づけられ、しかも今や医療的に達成できるものとして提示されているという印象を与える」と語っている。外見に関するプレッシャーにさらされている人々に向けて、身体を医療的に変えることが「美容やウェルネスの選択の一つ」として自然なものとして映りかねないという懸念だ。
コロンビア・カレッジ・シカゴのファッション研究准教授ローレン・ダウニング・ピーターズ氏も同様の見方を示し、「GLP-1薬がファッション業界においても社会全体においても、いかに当たり前のものになっているかを示している」と述べた。
摂食障害支援団体Beatの渉外担当ディレクター、トム・クイン氏は「GLP-1薬の広範な使用と宣伝を懸念している。摂食障害を抱える人々にとって非常に魅力的に映りうるからだ。ファッション業界がこれまで非現実的な体形を理想化・推進してきた側面がある中で、Mounjaro製造元がこのイベントのスポンサーになることは問題のある組み合わせだ」と語った。
プラスサイズモデルの起用は「ガス抜き」か
今回のVogue World: Milanoには、体形の多様性を訴える活動で知られるプラスサイズモデルのアシュリー・グレアムとパロマ・エルセッサーも出演した。ただし、プラスサイズモデルのフェリシティ・ヘイワード氏はガーディアンの取材に対し、このキャスティングを「ボックスへのチェックマーク」にすぎないと批判し、「体形の多様性を装ったコスプレ」と表現した上で、協賛の選択は「メガホンで痩身を推進しているようなものだ」と述べた。
イーライリリーの広報担当者は声明でこう説明している。「今回の協賛は、150周年記念の一環です。150年間、健康を何よりも優先してきた歩みです。健康こそが、私たちひとりひとりに自由に動き、探求し、人生に向き合う力を与えてくれます。Vogueのような文化的プラットフォームと連携するのは、そこが身体と健康についての会話が交わされる場だからです。私たちは、体重に関する議論を外見から健康へと転換し、肥満に向き合う人々が日々直面するスティグマに挑戦しようとしています。」
ガーディアンの報道によれば、イーライリリーは2025年のVogue World(ハリウッド開催)にも協賛しており、今年前半に行われたメットガラのライブストリームでも協賛した実績がある。今回のミラノ協賛は単発の取り組みではなく、継続的な文化的パートナーシップの一部だ。
PR Dailyが広報担当者に問いかけたこと
PR Dailyは今回の事例を受けて、広報担当者が学ぶべき点をこう整理している。企業がイベントや団体との協賛を検討する際、公式のキャンペーンメッセージを超えて「2つの名前が並ぶことで、受け手は何を連想するか」を事前に考える必要があるということだ。
イーライリリーはVogue WorldでMounjaroを一切宣伝しなかった。それでも、肥満治療薬メーカーと「痩身を推進してきた歴史を持つ業界」の組み合わせが、批判者の目には独自のメッセージを発していた。意図と受け取られ方の間の溝は、広報の文脈では埋めることが難しい。
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情報ソース一覧
- スクープ:Eli LillyがVogue Worldへの参加を擁護 - PR Daily The Scoop: Eli Lilly defends presence at Vogue World - PR Daily www.prdaily.com/the-scoop-eli-lilly-defends-presence-at-vogue-world/
- 「問題がある」:肥満治療薬メーカーがVogue Worldイベントを後援することへの懸念 ‘It’s problematic’: concern as weight-loss jab maker sponsors Vogue World event www.theguardian.com
- Vogue Worldはプラスサイズモデルをランウェイに登場させたが、Mounjaroのメーカーもスポンサーに迎えた Vogue World Put Plus-Size Models On The Runway, But They Also Got The Makers Of Mounjaro As Sponsor www.fashiontimes.co.uk/eli-lilly-vogue-world-milano-body-image-debate-1764684
- Eli LillyがGLP-1市場でさらに地盤を固める中、Novoはその次の章に賭けている Novo is betting on its next chapter as Eli Lilly gains more ground in GLP-1s www.cnbc.com/2026/09/25/novo-eli-lilly-obesity-drugs.html
- 減量薬市場は本当にNovo Nordisk(NVO)とEli Lilly(LLY)の勝者総取りの戦いなのか? Is the Weight-Loss Drug Market Really a Winner-Take-All Fight Between Novo Nordisk (NVO) and Eli Lilly (LLY)? finance.yahoo.com