広報専門家の9割超がAI活用、それでも最重要スキルは「ストーリーテリング」と判明
PR Role Evolution: Beyond AI Automation, Towards Strategy
ポイント
- AIが広報実務に浸透し、人間の物語力が競争力源泉です
- Cision調査で91%のPR専門家がAIを活用
- 最重要スキルは「ストーリーテリング」が59%で首位でした
AIが広報実務に急速に浸透する一方、人間の洞察力や物語を構築する力こそが競争力の源泉だという認識が、業界を横断して強まっている。この傾向を裏付けるデータと専門家の見解が、2025年末から2026年初頭にかけて相次いで公表された。
Cisionは2026年1月6日、調査レポート「Inside PR 2026」を発表した。米国と英国のPR専門家約600人を対象とした調査で、生成AIをワークフローに活用している割合は91%に達した。活用用途ではアイデア生成が73%、文章の作成・改善が68%と上位を占めた。AIはデータ収集・分析にも用いられており、AIを活用したメディアモニタリングを使う割合は40%、AIを活用したレポーティングツールに依存する割合は約3割に上った。
求められるスキルは依然として「語る力」
Cisionの調査では、AIの活用が広がる一方で、2026年に最も需要が高いスキルとして「ストーリーテリング」が59%で首位に挙がった。メディアリレーション、戦略立案、データの読み解きがそれに続く。いずれも最終的に人間の判断と文脈の理解を必要とするスキルだ。CisionのCEOであるガイ・アブラモ氏は「PR担当者はより速く動き、成果を証明し、AIを責任ある形で活用することを求められている。同時に、コミュニケーションを意味あるものにする創造性と物語の職人技も手放せない」と述べた。
Berkeley Communications GroupのCOO兼米国マネージングディレクターであるポール・スタラード氏も同様の見解を示している。同氏は2025年12月16日に公開された同社の展望レポートで、「繁栄するエージェンシーはAIが主導するのではなく、ストーリーを軸に据え、関係性を重視し、意味ある戦略に導かれながら、裏方としてAIを活用するものだ」と指摘した。AI活用は効率化を促すが、それはキャンペーンを主導するためではなく、創造的な人間の思考に余力を生むためだという立場だ。
Berkeley Communications UKのマネージングディレクターであるニック・ヘッド氏は、同展望レポートの中で「強いストーリーを見抜く力こそが、複雑さを明快さに変え、アイデアを行動に結びつける」と述べた。同氏は、自動化が加速する時代においても、共感・洞察・人間関係がコミュニケーションの仕事に実質的な意味を与えると強調した。
組織の「速さ」に差が出ている
Cisionのレポートによれば、メディア環境の急激な変化を最大の課題と感じているPR担当者は60%に上る。リソース不足を課題とする割合は58%だった。特にPR代理店では、メディアの細分化を大きな障壁として挙げた割合が71%と、企業内広報よりも高い水準を示した。
組織の機動力についても認識のずれが明らかになった。「非常に機動的だ」と答えた経営幹部は3人に1人だったのに対し、実務担当者で同じ回答をした割合は14%にとどまった。承認プロセスの遅さ(53%)、組織設計やチーム規模の問題(63%)が機動力を損なう要因として挙げられた。
ブランド認知度はPRの最優先事項として36%の回答者に挙げられた一方、経営幹部(32%)と代理店(33%)は売上やROIへの意識が相対的に高かった。これに対して企業内広報や非管理職層は引き続きブランド認知度を重視する傾向が強く、約40%が最重要事項と回答した。
AIが広がる時代の「人間らしさ」への回帰
Berkeley Communications展望レポートでスタラード氏は、AI生成コンテンツの氾濫によって「感情のない500文字の文章」が溢れる状況が生まれており、ブランドはその弊害に気づき始めていると指摘した。同氏は2026年について、デジタル疲弊と自動化アプローチへの反動から、イベントやワークショップを含む対面体験が再び重視されると予測した。
ヘッド氏も、「好奇心旺盛で思慮深く、協調的であること」がエージェンシーとしての強みであり、信頼を築き、創造性を生み、記憶に残るストーリーを届ける土台だと述べた。AIの活用はこうした人間的な強みを代替するものではなく、それを発揮するための環境を整えるものだという認識は、複数の専門家に共通していた。
情報ソース一覧
- テーブルでジェンガをするように:なぜ広報プロは実行から戦略へとシフトすべきなのか Playing Jenga at the table: Why comms pros must trade execution for strategy www.prweek.com
- PRの未来 2026:なぜ人間の洞察がAIを凌駕するのか The Future of PR 2026: Why Human Insight Beats AI www.berkeleypr.com/tech-meets-instinct-the-future-of-comms-in-2026/
- Cision - グローバルクラウドベースのコミュニケーションおよびPRソリューションのリーダー Cision - Global Cloud-Based Communications and PR Solutions Leader www.cision.com
- PRの未来:2026年に代理店が優先することとは Future of PR: What agencies are prioritising for 2026 www.marketing-interactive.com/future-of-pr-what-agencies-are-prioritising-for-2026
- インテリジェントAIの台頭が2026年のPRを再定義する6つの方法 6 ways the rise of intelligent AI is redefining PR in 2026 www.incomms.com
- 広報におけるAIと信頼性のバランス Balancing AI & Authenticity in Public Relations www.cision.com
- PRの未来:シンガポールの代理店が2026年のプレス戦略をいかに書き換えているか Future of PR: How SG agencies are rewriting the press playbook for 2026 www.marketing-interactive.com
- PRの次に来るものとは?香港の業界関係者が語る新しい信頼の方程式 What's next for PR? HK industry players on the new trust equation www.marketing-interactive.com
- AIがリスクを高めた:なぜ戦略的コミュニケーションは2026年も人間主導であり続けるのか AI has raised the stakes: Why strategic communications remains human-led in 2026 itbrief.ca
- AIとPR:なぜ2026年が業界にとって決定的な年になるのか AI and PR: Why 2026 will be the defining year for the industry www.exchange4media.com